地方競馬所属馬がJRAの競走に遠征する例は数多く見られます。
しかし、高知けいばには勝利馬がJRAの特別指定競走に遠征することができる2歳馬の「JRA認定競走」が1995年の制度開始以来2022年度まで設定がなく、また地理的な要因等の諸条件もあってかJRAで行われる指定交流競走に高知けいば所属馬がJRAに遠征することも極めて少なく、これまで8戦9頭しか確認されていません。
これまでの遠征記録をまとめたうえで、現在高知けいば所属馬がJRAに遠征できる方法をまとめてみました。
これまでのJRA遠征記録
(参考:高知けいば旧公式サイト内コラム「ゴールポスト通信」、高知けいば公式サイト)
高知けいば所属馬がJRAに遠征するには
高知けいば所属馬がJRAの「中央競馬指定交流競走」に遠征できるのは次のパターンとなります。
特別指定交流競走への出走
出馬表の記号に合わせて「特指(とくし)」と呼ばれる、地方競馬所属中に「JRA認定競走」「JRA指定競走」(以下まとめて「認定競走」)で1着を得るか、JRAの計算式で算定された収得賞金を獲得している地方競馬所属馬が出走できる競走で、地方競馬からの遠征馬の多くはこの競走への出走です。
条件は1勝クラス以上で設けられており、出走馬の収得賞金に合致する競走条件の競走に出走することができます。
認定競走
認定競走は2歳競走のうちJRAが認定、もしくは指定した競走です。現在は以下に分類され、いずれも1着馬が「認定(指定競走勝)馬」となります。
2022年度まで高知けいばには認定競走が設定されていなかったものの、以前の所属場でこれらの競走を勝利して高知けいばに移籍した場合は、引き続き認定馬として遠征することが可能でした。ただ、当時は認定を持った馬が移籍するケース自体が稀でした。
2023年度より重賞級認定競走・上級認定競走が高知にも設定されたため、その競走に勝利すれば高知所属で認定馬となりJRAへ遠征することが可能となりました。
収得賞金による出走
2020年から新設された制度で、認定競走に勝っていなくてもJRAの格付けで使用する評価値「収得賞金」が馬齢ごとに定められた額を超えていれば特別指定交流競走へ出走できます。
収得賞金の算定方法と、特別指定交流競走へ出走できる基準は以下の通りです。
中央競馬の競走以外の競走における収得賞金に参入する額
対象 | 収得賞金に参入する額 |
---|---|
中央以外の1着本賞金 | 1,200万円以上は半額 400~1,200万円未満は400万円 10~400万円未満は全額 10万円未満は10万円 |
地方ダートグレード・ 外国の重賞・ 2着本賞金100万円以上の いずれかの2着本賞金 | 480万円以上は半額 160~480万円未満は160万円 160万円未満は全額 |
※中央競馬で収得賞金がある場合は同項目ロの表により加算
※10万円未満は切り捨て
特別指定交流競走へ出走できる収得賞金額
馬齢 | 収得賞金 |
---|---|
2歳 | 150万円超 |
3歳 | 300万円超 |
4歳 | 500万円超 |
高知を含め地方競馬の賞金水準が上がったこともあり、それなりの上位馬であればクリアできる馬はある程度いるのでは?という条件になっています。
出走できない馬
ここまでの条件を満たしていても、以下の制限に該当する馬は出走できません(競走によっては別に制限あり)。また、同一締切日に複数の申込できる競走がある場合、申し込めるのは1競走だけです。
- 5歳以上の馬
- 地方所属となる前にJRA所属であった馬(2歳までに未出走で登録抹消された馬は除く)
- 出走申込締切日までの前2競走で5着以内を得なかった馬(重賞級認定競走、上級認定競走、指定競走の各1着馬は除く)
- 3歳1勝クラス競走について、この条件に既に3回出走した馬(当該条件で8着以内を得た馬は除く)
- 3歳以上1勝クラスは4歳馬(4歳馬は2勝クラス以上の競走にしか申し込みできない)
優先選定
「函館2歳ステークス」を除く2歳オープンの特別指定交流競走と条件クラスの特別指定競走は認定馬が優先となります。
指定交流競走
出馬表に「指定」と表示される競走で、一部のオープン特別や「特指」でない重賞競走がこの競走となります。
GI競走
競走ごとに定められている出走申込資格や競走成績を満たした場合となります。一部は優先出走が認められる成績をあげた馬しか申し込めないなど極めて高いハードルがあります。
GIステップ競走
上位馬にGI競走への優先出走権が与えられる「GIステップ競走」へ地方競馬からの出走する場合、JRAの2022年秋季番組からは、下記のいずれかに該当すれば出走申込みできることとなっています。
- 芝実績馬
(芝コースの競走に地方競馬所属で遠征し、指定された競走成績を収めた馬) - JRAの規定による収得賞金が一定額を超えている馬
競走毎に地方競馬所属馬の出走枠があり、枠内で出走馬が選定されますが、このうち芝実績馬は優先選定されます。
なお、2022年夏季番組までは「ブロック代表馬」という制度があり、全国を5ブロック(北海道/東北/南関東/東海・近畿/四国・九州)に分けた上で、地方競馬で行われる代表馬選定競走の1着馬か、選考会で選定された馬1頭がブロック代表馬となり、地方競馬所属の出走枠内の範囲で優先出走できる制度があり、高知けいば所属馬のJRA遠征ではこの規定でGIステップ競走へ参戦するケースが複数ありました。
その他の指定競走
競走毎に定められた出走資格を満たせば申し込むことができます。
ただし、ダート交流重賞競走の場合、3歳馬以上の競走はJRAの収得賞金が1600万円超、3歳馬の競走は500万円超あることが条件となります。
またそれ以外の3歳以上の競走の場合、競走条件が下位の馬のうち、JRAの競走馬登録抹消歴があり(2歳までに未出走で抹消した馬は除く)、出走申込直前の抹消後の地方競馬で収得賞金加算がなかった馬は出走申し込みができません。
(参考)高知けいば騎手がJRAに遠征するには
高知けいばをはじめとする地方競馬の騎手がJRAで騎乗する場合は、次の2パターンとなります。
騎手シリーズ戦に選出
JRAで行われる地方競馬騎手が参加する騎手シリーズ戦に選定された場合、JRAの競走に騎乗できます。現在は「ワールドオールスタージョッキーズ」(地方競馬全体で1名)、「ヤングジョッキーズシリーズ」(地方競馬西日本地区(東海・北陸以西)から複数名)が行われていますが、参戦するためにはいずれも地方競馬内のトライアルを勝ち抜く必要があります。
(特指)(指定)[指定]に騎乗
指定交流競走(指定)・特別指定交流競走(特指)には、出走馬の所属する地方競馬の騎手が当日限りのJRAの騎乗免許を受け、騎乗することができます(JRAの騎手が騎乗する場合もあります)。
また、交流競走が実施される競馬場において、当日の(特指)・(指定)以外の競走は地方競馬から遠征した騎手が騎乗できる競走として指定されており、これを一般的にはエキストラ騎乗と呼んでいます。該当する出馬表に角囲みで『[指定]』と表示されているのは地方所属騎手のエキストラ騎乗が可能であることを示しています。
このうち、主に下記の規定に地方競馬との交流に関するものが含まれています
- 「競馬番組一般事項」
- 「[地]が出走できるGI競走等とそのステップ競走について」
- 地方競馬交流関係