(初稿:2021.6.16)
更新:令和7年度の番組編成要領に対応
騎手の騎乗や騎手服(勝負服)の取り扱い、競走馬への負担重量の設定についても、JRAと地方競馬、また地方競馬ごとによってルールはそれぞれの事情により様々です。高知けいばのルールを整理してみました。こちらも「番組編成要領」に掲載されている内容ですが、一部はそれ以外や、中継放送等で語られた内規的なものも含めています。
なお、内容は2025年3月31日から適用分の「高知競馬番組編成要領」に基づいたものです。
(抜粋して掲載しています。番組編成要領→こちら)
騎乗回数
騎手の騎乗回数ルール
JRAでは1日の開催で騎手の騎乗回数に制限は設けられていないため、その日の全12競走に12連続で乗ることも可能ですが、地方競馬では各場毎の規定で騎手の1日の騎乗回数に制限がかけられています。
高知けいばでは、現在騎手が1日の競走で騎乗できる最大騎乗数は原則8回以内までとなっています。ただし、開催執務委員長が認めた場合はこの限りではないことから、出馬表確定後や開催中に急遽負傷や疾病等で騎手が離脱した場合は、この制限にとらわれず騎乗変更で1日8回を超える騎乗が認められます。
一方、ときおり特に急遽離脱した騎手がいなくても出馬表の段階で1日8回を超える騎乗がある騎手がいることがありますが、他の騎手が全員8鞍乗っていなくてもあることから、あくまで「原則」ということで例外も許容されているようです。
また、連続騎乗回数についても地方競馬では制限がかかっているケースがあり、高知けいばでは遅くとも平成20(2008)年11月までは連続5回まで、平成22(2010)年度までは連続8回までという制限がありましたが、現在は制限は規定されていません。このため、例えば都合で9回騎乗することになった場合、休みなく9競走連続で乗ることも可能です。
なお、JRAや他の一部の地方競馬とは違い、高知けいばには一定の勝利度数がないと重賞競走に騎乗できないという制度はありません。
遠征騎手のエキストラ騎乗
平地地方競馬全場では交流・地元限定に関わらず2006(平成18)年度より、重賞競走に地方競馬他場の騎手に騎乗を依頼することが可能となっていますが、高知けいばではこれに加え、2013(平成25)年度に準重賞競走の区分を復活させてからは、(公式な発表はなかったものの)準重賞でも地方競馬他場騎手の遠征騎乗を可能としているようで、実際に遠征があった例があります。
一方、交流競走開催日の際、主目的の騎乗競走以外の競走についてへの騎乗(一般的には「エキストラ」騎乗と呼ばれる)については、各場で運用が異なっています。
高知けいばの場合は中央・地方他地区所属などの区分に関わらず所属騎手と合わせており、主目的の騎乗競走を含めて8回までの騎乗が可能となっています(ただし、式典準備等で騎乗できない競走がその都度指定されることもあります)。そのため、例えば他場騎手が「一発逆転ファイナルレース」に乗ることも制度上は可能で、実際に騎乗例があります。
騎手服
高知けいば所属騎手の騎手服の規定
騎手服(勝負服)で使える色、模様の規定は地方競馬では各主催者で規定しており、公開しているところはほとんどありません(騎手服に関するレポート記事でライターさんが取材すると断片的に出てくることはありますが)。高知けいばでも公開されておらず詳細は不明ですが、以前実況放送内の「Jockey's Talk!」で「デビュー時に『水色 青鋸歯形』の服色を希望した所、高知の規定では同系統の色を合わせて使えないと言われたので今の色になった」と話した騎手がいたことから、そういう規定はあるものと思われます(ただその後移籍の騎手が以前から使用していたこの例示と全く同じ服色を継続して使っていたので、そこは柔軟なのかもしれません)。
なお、高知けいばで特徴的な騎手服の柄となると上田将司騎手の胴と背中に大きな白星を1つだけ付けた騎手服かと思いますが、これも服色呼称上はあくまで「白星散らし」となっています。


高知けいばの「貸服」
遠征騎手はJRA所属馬に乗る場合は馬主服、地方他地区騎手が地方所属馬に乗る時は所属場の自分の騎手服を着ますが、JRA騎手が地方所属馬に乗る場合や遠征騎手の騎手服が他と類似していたり、騎手服を忘れた場合に主催者から貸し出されるいわゆる「貸服」。これも地方競馬各主催者によって大きく異なっており、JRAの藤田菜七子騎手がデビュー直後に各地の条件交流競走に遠征し、エキストラ騎乗で様々な貸服を着たことが契機となったか、ネット上でもこれに関する研究記事が見られます。
高知けいばでは「全日本新人王争覇戦競走」の際にJRA騎手が必ず着ることとなりますが、それ以外ではそもそもJRA騎手が遠征する競走が少ないことから滅多に見ることはありません。(「ヤングジョッキーズシリーズ トライアルラウンド高知」では、JRA騎手も個人デザインの騎手服を使うため、エキストラ騎乗しない限り貸服は使いません。)
現在の貸服はJRAで使用されている「地方競馬所属の競走馬で、馬主がJRAで馬主登録をしていない場合」に貸し出される「交流服」と同一デザインとなっており、騎乗馬の枠番号ごとに「白 (枠色)四ツ割 袖(枠色)一本輪」となっています。ただし、1枠は枠色が「白」で、これでは真っ白になってしまうため、1枠については(枠色)の部分は「水色」になります。
なお、同枠に貸服騎手が入った場合、馬番号の大きな方の帽子が染め分け帽になった上で、貸服の地色が「灰色」になります。これは2025(令和7)年1月の「第39回新人王争覇戦競走」からこの扱いとなっており、それまでは染め分け帽は使用していたものの、貸服は同じものを使用していました。同枠(2018.1.23の「第32回全日本新人王争覇戦競走」で偶然2戦とも7枠7番にJRAの木幡巧也騎手、7枠8番にJRAの坂井瑠星騎手が入っており、いずれも騎手服は同じで8番の坂井騎手が染め分け帽を着用していました→3R(第1戦)映像、5R(第2戦)映像(いずれも地方競馬ライブのアーカイブ))。
ちなみに現行の貸服が初登場したのは2015(平成27)年1月の「全日本新人王争覇戦競走」で、前年の同競走までは単色のジャンパーのような貸服を着用しており、その間は貸服使用の例が見当たらないことからこの間に変わったようです。
高知けいばでの馬主服着用
地方競馬は基本的に騎手が決めた騎手服を着用することになっていますが、JRAのように騎乗馬の馬主が決めた馬主服で騎乗するケースは、ながらくJRAとの交流競走でJRAの所属馬に騎乗する場合に限られており、高知けいばも長年同様でした。ただ、「黒船賞」では原則的にJRA所属馬にはJRAの騎手しか乗れない規定があるため、実情は条件交流の「~盃」で何人か中央馬騎乗の依頼を受けた騎手が見慣れない馬主服を着て現れ、「服が違うと随分と雰囲気が変わるな(笑)」、という光景が年にごくわずかあるのみとなっていました。
地方競馬では2006(平成18)年度からホッカイドウ競馬で指定された競走に限り、希望すれば馬主服着用での騎乗が可能となりました。これにより、地方競馬の馬主資格のみ持つ馬主がホッカイドウ競馬だけで使える馬主服を作ったり、JRAの馬主でもホッカイドウ競馬では違う柄の馬主服を登録するケースがあるなど、馬主のステータスの一つともいえる馬主服の採用はもともと馬主側に潜在的な需要があったとされます。とはいえ、地方競馬の騎手服文化への支持も高く、わかりやすいという一面もあってか、これに追随するところはしばらくありませんでした。
2016(平成28)年度に、岩手競馬が自場の厩舎に所有馬を預け、かつJRAの馬主資格を持つ馬主が希望すれば、指定された競走でJRAに登録している馬主服と同一柄の馬主服馬主服着用を認める制度を導入。これがきっかけとなったのか、各地区で岩手方式での馬主服着用が認める制度改正が次々と行われ、高知けいばでも2018(平成30)年度から、岩手方式に近い形で馬主服着用が認められるようになりました。
(当時のニュースリリース「高知競馬場における馬主服の導入について(2018.4.5)」→こちら)
導入開始から現在までルールに変更はなく、次の通りとなっています(遠征の中央競馬所属馬は従来通り馬主服)。なお、高知けいばでは、高知に所有馬を預けていない馬主の地方競馬所属馬が遠征で出走した場合でも馬主服を着用しているケースが過去あり、この点は岩手方式とは異なるようです。
- 馬主服の使用が認められる対象
日本中央競馬会(JRA)の服色登録を受けている馬主が所有する地方競馬所属馬が、日本中央競馬会で登録している服色を使用すると、対象となる競走毎に主催者(高知県競馬組合)に届け出た場合。 - 馬主服の使用を認める対象競走
- ダートグレード競走(現在は「黒船賞(JpnIII)」のみ)
- 重賞競走
- JRA条件交流競走(現在は「JRA交流 ○○盃」が年に5競走程度)
- 2歳新馬競走(年によって施行数は異なるが年間10競走程度)
ちなみに、これまで上記4種別の競走とも対象馬の騎手が馬主服で出走した実例があります。ただ、あくまで希望する場合使えるということであり、要件を満たしていても馬主服を使わない馬主さんもいらっしゃいます。
高知けいばの競走における負担重量
競走結果を大きく左右するだけでなく騎手にとっても体調管理で最も基本となる体重調整の根幹である負担重量。競馬における最も基本的なハンデであり、その設定はJRA、地方関係なく色々な要素を用いて設定されています。高知けいばではいわゆるハンデキャッパーが負担重量を決めるハンデキャップ戦はなく、大きく分けて「定量重量戦」と「別定重量戦」の2種類に分かれます。
なお、動画サイトでアップされている2010年春より前の古い個人協賛競走などの映像で「馬齢重量(戦)」という表現が使われていることがあります。馬の性別と年齢で負担重量を決める高知けいばの競走では現在でも基本の形式ですが、こちらは地方競馬全国協会が取りまとめて2010(平成22)年度4月から競走番組の呼称(「A・B・C」の3段階を基本の区分とする)や牝馬に対する減量の扱い(3歳以上牝馬は牡・セン馬から2キロ減とする)を平地地方競馬で合わせる申し合わせをした際、高知けいばでは馬齢重量戦を定量重量戦の一部という形に改編したため、現在、表現としては用いられていません(なお、NARの記録では2010.3.26と2010.3.27の競走記録が定量重量戦になっていますがこれは厳密にはフライングで、編成要領の規定上はまだ馬齢重量戦です)。
ちなみに、年またぎの開催の場合、馬齢で負担重量が決定される競走の場合は編成サイクル第1日目の馬齢が採用されます。
なお、2023年に「騎手の健康と福祉及び将来にわたる騎手の優秀な人材確保」を理由としてJRAが実施した負担重量の引き上げが行われましたが、その後地方競馬でも徐々に行われ、高知けいばでも2025年度から実施されています。
定量重量戦
高知けいばで現在使用されている定量重量戦は4種類あり、高知けいばの競走の大半は定量重量戦と言って差し支えありません(編成要領上は番号付きで区分されていますが公の表記はすべて「定量」で統一されています)。なお、前項で述べたかつての「馬齢重量戦」は現在の「定量重量1」と考えていいかと思います。
名称 | 競走種別 | 負担重量 |
---|---|---|
定量重量1 | 級限定準重賞 一般格競走 | 2歳55kg 3歳3月まで56kg、4月以降57kg 4歳以上57kg 牝馬は2歳1kg減、3歳以上2kg減 下位級1kg減(希望馬除く) |
定量重量2 | 2歳競走 3歳競走 | 2歳56kg、3歳57kg 牝馬は2歳1kg減、3歳以上2kg減 |
定量重量3 | 重賞競走 (黒船賞以外の古馬) | 3歳56kg、4歳以上57kg 牝馬は2kg減 |
定量重量4 | 牝馬重賞競走 (レジーナディンヴェルノ賞) | 4歳以上57kg |
2歳馬や春先の3歳馬が古馬と走ることによく驚かれる高知けいばですが、さすがに2歳馬が古馬戦に出る場合はハンデで2~3キロ軽い重量で走れます。
一方、3歳馬については古馬重賞(例年「高知優駿」後から古馬重賞の出走要件が「4歳以上」から「3歳以上」となり出走可能)ではハンデで1キロ軽くなりますが、古馬との普通競走や特別競走では1~3月のみ1キロ減となる一方、4月以降は古馬と同斤量となります。
重賞はかつては色々と負担重量を調整するルールが付く競走が多くある時代もあったのですが、現在はグレード別定となる「黒船賞」以外は定量重量戦のみとなっています。
他場でもよく見られますが、級混合戦(隣接2級の混合しか組まれません)の場合は下位級馬の負担重量が1キロ減となる為、これでどちらの級の馬なのか判別することが可能です。
別定重量戦
一方、別定重量戦も4種類ありますが、こちらを使用する競走は上級競走の一部に限られます。(編成要領上は番号付きで区分されていますが公の表記はすべて「別定」で統一されています)
競走種別 | 負担重量 | |
---|---|---|
別定重量1 | 準重賞競走・A級競走 (古馬オープン準重賞・ A級競走(AB混合含む)) | -基本重量- 2歳55kg 3歳3月まで56kg、4月以降57kg 4歳以上57kg 牝馬は2歳1kg減、3歳以上2kg減 下位級1kg減(希望馬・番組編成 委員指定馬除く) -加算重量- 4/1(9/29以降は9/29、転入馬は 転入日以降)の最上位競走及び他場 重賞競走(2、3歳競走)の1着毎に1kg増、 加増以降の高知競走 2着以下毎に1kg減。 最高58kg、最低基本重量 |
別定重量2 | 牝馬準重賞競走 | A級57kg、B級56kg C1・C2・C3級・3歳55kg |
別定重量3 | グレード別定 (黒船賞(JpnIII)) | 4歳以上56kg 牝馬2kg減 (南半球産4歳馬1kg減) 実施要領で定める日までに 3歳以降の競走で GI(JpnI)競走1着馬2kg増 GII(JpnII)競走・GIII(JpnIII)1着馬1kg増 |
年4競走の牝馬準重賞は馬齢を問わずに在籍級での斤量決定となり、A級牝馬は通常より2キロ増で走ることとなります。そして黒船賞は他場のダートグレード競走でも採用例の多いグレード競走の勝利歴に応じて加増されるグレード別定制となっています。
「別定重量1」の負担重量増減ルール
他場では普通競走でも「勝って同条件なら1キロ加算」や「賞金がいくらごとに1キロ加算」など細かく負担重量に差を付けるところもあり、高知けいばもかつてはそういったルールを採用していた時期もありましたが、現在別定重量戦で直近の成績を加味してハンデを付けるのは、古馬オープン準重賞か、A級戦(選抜、賞金順とも。またAB混合戦も対象)で採用される「別定重量1」戦のみ。文章にするとこのようなルールとなります。
- ハンデ増減の起点は4月1日と10月1日。転入馬は転入日が起点。
- 重賞、オープン準重賞、「A-1(選抜)」、他場重賞で1着を取った次の「別定重量1」戦では負担重量1キロ加増。
- 加増後に高知の競走で2着以下となると負担重量1キロ減。
- 最高重量は58キロ。最低重量は基本重量。
- 起点日をまたぐとハンデはリセット。
2025年から基本重量が1キロ引き上げられ、古馬の牡馬は57キロ(牝馬2キロ減)となりましたが、別定重量1の最高重量は58キロのまま変更されていないことから、加増は1段階のみとなりました。
高知けいばの騎手減量制度
「貸服」以上にJRAの藤田菜七子騎手の地方遠征で地方競馬の若手騎手や女性騎手の減量制度がバラバラであることが明らかになったのがきっかけとなったのか、2019(平成31/令和元)年度から女性騎手の減量制度を基本的な部分が中央・地方で統一されました。ただし、やはり主催者ごとに微妙な差異(重賞騎乗の制限、申し出による減量解除等)は存在します。高知けいばの場合は次の通りとなっています。(2025.4.1時点適用)
勝利度数は初騎乗日から当該競走の出走投票締切日の前日までに国内で騎乗して得た1着の回数となります(JRAの騎手はJRAが指定した勝利度数をこの表に当てはめます)。また、本人の申出によりこの減量を適用しない場合もあります。
女性騎手
騎手免許 通算取得期間 |
勝利度数 | 減量 | 表記 | 所属適用騎手 |
5年未満 | 50回以下 | 4kg | ★ | |
51回以上100回以下 | 3kg | ▲ | ||
5年以上 | 勝利度数に関わらず | 2kg | ◇ | 濱 尚美騎手 |
男性騎手
騎手免許 通算取得期間 |
勝利度数 | 減量 | 表記 | 所属適用騎手 |
5年未満 | 30回以下 | 3kg | ▲ | 阿部基嗣騎手 近藤翔月騎手 |
31回以上50回以下 | 2kg | △ | 城野慈尚騎手 | |
51回以上100回以下 | 1kg | ☆ |
騎手減量が適用されない競走
高知けいばでは、重賞競走は例外なく騎手減量が非適用となります。
また、騎手招待競走など、実施要領・細目で別に騎手の減量を適用しないと定められた競走についても適用されません。なお、実施要領・細目の発表される競走のうち、中央条件交流競走は2019(平成29)年度の「桂浜盃」から騎手減量適用あり(それ以前から遠征減量騎手の重賞以外のエキストラ騎乗は減量適用あり)となったほか、女性騎手招待競走ながら男女混合で行われていた「レディスヴィクトリーラウンド 高知ラウンド」では2020年2月の開催時のみ騎手減量適用ありで行われました。
高知けいばで起こり得る最高負担重量・最低負担重量
最高負担重量は「別定重量1」で前走に最上位競走を勝利した牡馬・セン馬、もしくは「別定重量4」の「黒船賞(JpnIII)」でGI(JpnI)勝利歴がある牡馬・セン馬が出走する場合の58キロとなります。
最低負担重量は「定量重量1」となる一般格競走の級混合競走で、下位級2歳牝馬もしくは3月までの3歳牝馬に通算免許取得期間5年未満かつ勝利度数50回以下の女性騎手(★の騎手)が騎乗する場合で、
55キロ(2歳馬)-1キロ(牝馬)ー1キロ(下位級馬)ー4キロ(★の騎手)=49キロ
56キロ(3月までの3歳馬)-2キロ(牝馬)ー1キロ(下位級馬)ー4キロ(★の騎手)=49キロ
が理論上の最低値となります。