初回投稿:2013年ごろ?
更新:令和5年度編成要領改定に合わせ文脈整理
いつ、どの距離の、どのレースに出走するか。
成績を大きく左右する出走レースの選択、決定は競馬にとって重要な要素です。中央競馬と地方競馬、そして地方競馬の中でも競馬場ごとでその方法は大きく異なっています。高知けいばのレースの編成、出走馬の決定はどのような仕組みになっているのか。例によって番組編成要領(以下「編成要領」)の内容と傾向から推測してみることとします。
なお、編成要領に掲載されていない事項については私見であることをお断りしておきます。
(以下は「令和5年度 高知競馬番組編成要領」(2023年4月1日以降適用分)に基づいています。)
レースの編成方法
レースの編成単位
中央競馬では春季、夏季、秋季の年3回に分けて施行予定のレースが公表されます。一方、地方競馬では「第○回××競馬」の「第○回」という開催回ごとで施行予定のレースが編成されることが一般的です。高知けいばでも少なくとも2003(平成15)年度までは開催回単位でレース編成が行われていました。
しかし、遅くとも2005(平成17)年度からは開催回ごとでなく、年度の初日の開催から連続する3もしくは4日の開催日(現在の編成要領上は1~6日間まで設定可能)を「サイクル」と呼ぶ期間に区切る方式に変更され、現在はサイクル内にすべての格付けの馬が1回走れるようレース編成が行われています(編成要領ではこれによって組まれたレースを「一走目」と表現。)
●サイクル区切りの例(令和3年度第1回~第2回)
二走目とは
出走希望馬全馬が1回走れるだけのレースを組んでもまだレースが施行可能な場合は、直前の週の「一走目」に出走し、今週は出走できる「一走目」がないにもかかわらず連闘を希望する馬だけを集めた「二走目」と呼ばれるレースが組まれます。
在籍頭数も賞金も手当も少なかった時代の高知けいばは、二走目をある程度組まないとレース数を確保できず、一走目と二走目を組み合わせても少頭数で12レース組めない時期が長く続いていたため、かつては成績低迷馬だろうと重賞ウイナーであろうと、丈夫で状態がよければ二走目戦で連闘するというのはそう珍しくはなく、一日の半分近くが二走目戦という頃もありました。
経営急回復によって在籍頭数が増加し頭数も揃うようになり、一時は週2回の開催であればほぼ二走目を組み合わせることで常に1日12レース施行できるようになりました。その後一走目の賞金・手当が大幅にアップしたことで、間隔を開けて使う馬が増えてきたためか、現在は予定しても不成立になることが増え、近年は実施されなくなっています。
「二走目」を組む場合は1サイクル4日で二週にまたがる開催の時期に、前週に一走目を走った級について翌週「二走目」が組まれます。ただし、「二走目」はあくまで隙間を埋める存在であるため、「二走目」の出走希望馬の頭数に対して「二走目」のレース数が足らない場合は隣接クラスとの混合戦などに再編された上で、除外となる馬が出る可能性もある反面、一走目だけで12レース組める場合は最初から二走目を編成しなかったり、当初は組まれたものの出走投票の結果、馬が足りず不成立となって行われないこともあります。この場合、他のクラスの二走目でまだレースが組める場合はその級の二走目へ振り替えられます。
出走馬の「級」と「組」への振り分け
中央競馬と違い、地方競馬では各馬に付与する格付けを細かく付けるようになっており、中央の「オープン」「3勝クラス(準オープン)」等に相当する「A級」や「B級」といった大きなクラス分けの下に、「1組」「2組」といった小さなクラス分けをしています。地方競馬は基本的にこの小さなクラス「組」を単位とし、出走を申し込んだ馬は、重賞等の選出で選ばれた馬を除いて、「組」に属し、1つの組単独、または複数組を組み合わせてレースを編成することが一般的。高知けいばでも同様です。
高知けいばにおいては、当該編成サイクルへの出走を申し込んだ馬について、編成日時点での馬齢と番組賞金に基づき、原則4歳(秋以降は3歳)以上の「一般格」、2・3歳馬かつ一定額以下の番組賞金保有馬の「3歳格」、「2歳格」という「格」が付けられ、さらに一般格はそこから番組賞金の持ち金に応じて「A」~「C3(上・下)」という「級」に振り分けられます。
次に、番組賞金の多い順、もしくは選抜など各級ごとにその都度決められた方法で「組」へ馬が割り振られます。
編成の都合により隣接する2つの級に属する馬による級混合戦も時々組まれますが、基本は1つの組で1レースとする形を取っており、必要な競走数も勘案しながら組が作られていき、そのサイクルの全レースが編成されます。
※追加申込み
サイクルの最初の編成が終わった後に転入してきた馬について、まだ転入馬の自己条件の競走のある週の編成確定前で、次のサイクルまで待たずすぐに出走させたい場合、要領2(3)の規定に基づいて追加編成を申し込むことができます。ただし、重賞、準重賞、特別競走には申し込めない他、頭数が多かったり、後述の同一厩舎の多頭出し制限に引っかかった場合は除外対象となります。
また、サイクルが2週4日間で前半週にあった重賞、準重賞に出走して敗れた馬のうち、後半週にまだ自己条件がある場合は追加申込みで出走できることがあります(要領6(8))。サイクルが2週4日間の場合、後半週にも改めて残り2日間分の編成状況が発表されるのは、二走目戦の編成に加えて、追加申込み馬が加わるためでもあります。
編成組の付け方
組名は編成要領6(13)の規定で、一走目の場合は重賞、準重賞、特別競走を含めて順番付けを行いアラビア数字で「1組、2組…」、また、二走目はカタカナのイロハ順で「イ、ロ、…」と付けるようになっています。現在、公式表記は次の形で統一されています。
一走目【一般格は級・馬齢格はその格】「ー」【組数】【注釈】
(例:「A-1選抜馬」「B-2」「C1-3」「C2-5選定馬」「C2C3混合」「C3-20記者選抜」「2歳-2」)
二走目【一般格は級・馬齢格はその格】【組数】【注釈】
(例:「Aイ」「AイBイ混合」「C2ロC3イ混合」「C3ニ」「3歳イ」)
なお、重賞、準重賞、特別競走を含めて順番付けをするため、以下のように、見た目上1組がないケースがあります。
- 古馬重賞、オープン準重賞のあるサイクルでは重賞、オープン準重賞が「A級1組」の扱いとなり、A級条件戦の表示は「A級2組(A-2)」からとなる。
- 馬齢限定重賞、準重賞のあるサイクルではその重賞、準重賞が馬齢格の「1組」(2歳-1/3歳-1)の扱いとなり、当該馬齢格条件戦の表示は「(2歳/3歳)2組(2歳-2/3歳-2)」からとなる。
- B級以下準重賞、C級以下準重賞のあるサイクルでは、その準重賞が「条件上限級の1組」(B-1/C1-1)の扱いとなり、条件上位級の条件戦は「(B級/C1級)2組」(B-2/C1-2)からとなる。
- 2歳新馬戦と2歳既走馬戦が同一サイクルで行われる場合は新馬戦が上位組扱いとなり「2歳新馬」のみの表記(複数競走実施の場合は漢数字「壱、弐…」を付し、組数「2歳-1」も付ける)となり、既走馬戦はその後の組数となる。(新馬戦が1戦あるなら2歳既走馬戦は「2歳2組」(2歳-2)から。)
なお、2歳準重賞と2歳新馬戦が同時に行われる場合は準重賞(1組相当)→新馬戦(2組~)→条件戦の順に付番される。 - 牝馬限定準重賞、中央条件交流競走は別枠のため、一般格の組数には影響しない。
組の名称で級内の序列も示されており、数字なら小さい方、カタカナならイロハ順の早いほうが上位となっています。
組の名称が出走レースのレベルを図る目安になればいいのですが、出走頭数の関係で毎サイクルごとに組の総数は変わるほか、高知けいばの場合は番組賞金の多少が現状の強さに直結しているともいえないため単純に「4組より3組の方がレースレベルが高い」とは言えないこともよくあります。
余談ですが、二走目があるサイクルでのC3級の一走目は、C3上が前半週、C3下が後半週に行われているため、二走目は当然その反対の週での開催となります。しかし、2週ともにC3の二走目が編成されると、この時の組名は格としては下のC3下の馬が出る前半週が「イ」から始まり、C3上の馬が走る後半週は前半週の続きからとなるため、ここだけ組名の付け方の法則とはズレが生じています。
レースは一部を除いて選べない
高知けいばの出走馬の編成されている馬を見ていると、「短距離血統がマイル戦に…」とか、「距離が必要な馬なのになんで1300m戦…」というのがよく起こっています。
高知けいばでは、出走馬の組への振り分けは後述のルールに基づいてほぼ機械的に行われるうえ、「この組が走るのはこの日の第何レースで何m戦」と最初から上の表のようにすべて割り振られていることから、中央競馬や一部の地方競馬のように陣営がレースや距離を選んで投票し、出走日や距離を選べる方式ではありません。在籍頭数が多くないことから、希望を取っていては偏りが出る恐れがあることも一因かと推測されます。
なお、重賞や準重賞等の主要な競走や後述の格上挑戦に加え、2023(令和5)年度からはC3級下格付馬の1600m戦に関しては希望が考慮されます。
なお、高知けいばでは年度当初に年間の競走編成の予定があらかじめ作成されており、関係者にはそれが配布されているそうなので、ある程度予定を立てておくことはできるそうです。
距離設定にはパターンがある
前述の通り、高知けいばは所属組に対して実質的に最初から競走距離が割り振られています。このうち原則的に法則性をもって行われているのが級内の距離の割り振り方で、企画ものがない限りは基本的に次の3パターンです。
パターンA 級内全組同じ距離(例:C3級下は全組1400m戦)
パターンB 1組だけ違う距離、2組以下は別の同じ距離(例:C1-1は1600m戦、他のC1は1400m戦)
パターンC 1~3組が同じ距離、4組以下は別の同じ距離(例:C2-1~C2-3は1400m戦、他のC2は1300m戦)
たいていは級内で距離を変える場合、序列の高い組は距離を長く、低い組は短くというのが基本ですが、2019年あたりから1組が1300mで2組以下は1400mといった逆パターンが稀に見られるようになってきました。逆に各級間に関してはあまり法則性はなく、A級は1400mまでだがB級には1600mとか、C3上は全部1300mなのにC3下は全部1600mが組まれようなこともあります。
特徴として、サイクル内に重賞がある場合は重賞の距離に合わせて一般格の距離も同じように設定することが比較的見られ、マイル戦の「黒潮マイルチャンピオンシップ」や「だるま夕日賞」の際には条件戦にもマイル戦を多く組むといったケースがあります。
また、かつては3歳戦やC3下ではまず組まれなかったマイル戦が2019年あたりから時折組まれたり、一時全く使用されていなかった1800mが準重賞で徐々に使用されるようになるなど、馬資源が増えたこともあってか、距離設定には柔軟さがでてきている感があります。
転入初戦馬は原則まず平場から
他場ではときおり重賞でもいきなり転入初戦馬が出走して勝ってしまうケースが見られますが、高知けいばではどう見ても格が違いそうな転入馬であってもまずは平場の自己条件で転入初戦を迎えるケースがほとんどです。これは「高知競馬重賞競走等選出基準」において重賞と牝馬限定準重賞の出走資格に「所属場(=高知、交流競走の場合は出走時の所属場)で1走以上」と明記されており、また、級を指定する特別競走(いわゆる選抜戦)も「前走が高知でない転入馬」は選出されない規定があるためです(編成要領6(6)イ)。
ただし、牝馬限定以外の準重賞については所属場での既走経験の有無が前述の「重賞等選出基準」の出走資格に規定されていないため、こちらは転入初戦でも出走可能となっており、実際に過去の3歳の準重賞では転入初戦馬が出走したケースがあります(ただしサイクル途中の追加編成ではこのタイプの準重賞をはじめ、重賞、特別競走も編成不可(編成要領2(3)ウ))。
格上挑戦
自己条件より上位の競走へ挑戦する「格上挑戦」は高知けいばでも認められており、編成要領6(5)ア(ア)ただし書きで
「出走資格を満たす馬については、重賞競走、準重賞競走、特別競走、上位級の最上位(選抜、1組)又は当該級の最上位(選抜、1組)への出走を希望できる。」
と規定されています。この規定を使って重賞・準重賞に挑戦する下位級格付け馬はときおり現れます。一方、上位級や在籍級の特別競走(選抜、1組)に挑戦する馬は稀です。また格上挑戦はあくまで各級最上位への挑戦のみのため、例:『自己条件は「C3級の5組」(普通競走1300m)だけど、距離が長いほうがいいので「B級の2組」(普通競走1600m)に格上挑戦したい』といったことはできません。
なお、格上挑戦で勝利した場合は、編成要領6(9)の規定により、次走も挑戦した競走の同条件の最上位にそのまま居残りとなり、自己条件が格上挑戦を追い越すか、敗れるまでその状態が続くこととなっています。一方、5着以内の場合は自己条件の最上位(選抜、1組)相当の成績として取り扱われることになっており、次走は自己条件級に戻ってもそこの最上位戦に編成される可能性が残されています(6着以下の場合は恐らく自己条件級の番組賞金順の組に戻されると思われます)。
組の移動もありうる
公式サイトの「編成状況」ページに掲載されている出走投票前の各レース出走頭数を見ると、基本的に普通競走では同一級のレースでは頭数が平均化されており、また、特別競走は普通競走と同等か少し多めに編成されています。
このうち、重賞、準重賞、特別競走は編成要領6(14)(イ)で
「重賞競走、準重賞競走及び特別競走については、普通競走が番組編成上不均等な頭数にならない範囲で出走頭数を確保する」
と規定されており、普通競走に影響が出ない範囲で多頭数となるよう編成する方向性が明記されています。
一方、当然出馬表確定前に回避する馬もいるため、レースごとの頭数がいびつになった場合は調整の上出馬表を確定させるよう編成要領6(14)(ア)(ウ)で規定されており、下記のパターンにより調整されます。
- 直近の上位又は下位から移動
頭数が足りない組へ隣接組から移すパターン。「直近上位組の序列最下位」あるいは「直近下位組の序列最上位」から不足を補います。ただ、当該隣接組だけ動かすことによって級全体の頭数のバランスが崩れる場合はドミノのようにほかの組にも移動が生じることもあります。 - 組の分割・再編成・級混合戦への変更
「二走目」の出走申込馬が多かった時代に頻繁に行われており、回避が出てもなおあふれている場合は、抽選で出走馬を決めたあと、それを踏まえて再編成したり、級内だけでなく隣接級ともバランスを取り、組を分割したうえで「上位級最下位組と下位級最上位組」での混合戦に変えたりして再編成されていました。
同一厩舎の多頭出し
高知けいばの在籍頭数が増えてきたこともあり、現在1つの競走に出走できる同一厩舎の馬は最初の編成時点で40%以内(例:12頭立てなら4頭まで)と規定されています(編成要領6(12))。番組賞金が接近している馬が同じ厩舎に何頭も所属していると起きうるケースで、実際にあった際は直近の組に移動して編成されていました。
また、出走投票の結果回避があり、同一厩舎の頭数の比率が40%を上回った場合、50%までは許容される一方、過半数が同一厩舎となった際は50%以内となるように調整が行われます(方法は 「編成馬の移動・組の分割等再編成」→「過半数となった馬の厩舎の馬で抽選し、指定休の馬を決める」→「競走取り止め」の順)(編成要領6(14)(ウ))。ただ、出走投票後に出走取消等があって50%を超えてしまった場合はどうしようもないことからそのまま競走が行われます。
出走馬の編成方法
「重賞競走・準重賞・交流競走」「選抜戦」「2歳特別競走」「記者選抜」「選定馬戦」「普通競走(一走目)」「普通競走(二走目)」、それに現在は行われていない「希望馬戦」と、高知けいばで行われている競走種別ごとの編成方法を個別に見てみます。
重賞・準重賞・交流競走
重賞競走・準重賞競走・交流競走(以下「重賞等」)には毎年度編成要領と共に発表される「高知競馬重賞競走等選出基準」によりそれぞれ出走資格が設定されています。この出走資格のうち、オープン競走的位置づけのものには馬齢と「牝馬限定」や「所属場で1走以上」程度の縛りしかなく、下位級馬であっても(実際に選考されるかどうかは別として)挑戦が可能です。他場で直近不振でも実力を持っている馬が高知の格付けルールではよく下級格付けになることもあり、これによって重賞等への挑戦の道をつけているといえます。
一方、「レディスシリーズ」の「牝馬限定」ぐらいだった条件準重賞については「B級以下」「C級以下」といった在籍級も限定したものが準重賞が近年増加しているだけでなく、高知デビュー馬にチャンスを与える一環で「高知デビュー馬限定」のものもあります。
なお、交流競走については「全日本新人王争覇戦競走」やその他の「騎手(招待)交流競走」についても上記基準に規定がありますが、これらは事前には別途実施要領と細目が発表されます。また、中央条件交流競走については記載がありませんが、これも同様に実施要領と細目が発表されます。
重賞等(騎手交流競走は除くと思われます)への出走の際には、別に事前に重賞等への出走を希望することになっているようで、以前2013年の「高知県知事賞」において「予備登録馬」として出走希望馬が編成発表よりもかなり前に公開されたこともあったことから、何らかの仕組みがあるようですが、前述のものはレアケースで、地元限定重賞では予備登録馬の事前発表はありません(逆に、上位級馬でも希望せず選考もされなかったと思しき馬は重賞と同日の自己条件のレースに出走しているケースもあります)。
なお、馬の交流競走の場合、他所属馬は選定馬・補欠馬の状況が編成より前に発表されますが、高知所属馬についてはタイミングによって補欠含めて通常の編成日の前日まで出ないケースもあります。
出走馬の選出については、
- 重賞競走、準重賞競走及び交流競走については、競走成績を参考とし、出走希望を考慮の上、選出する。(要領6(6)(ア))
- 転入後、ダート交流重賞競走に出走した馬又は他場の重賞競走で1着となった馬は、直近の重賞競走(「⿊船賞」を除く)、準重賞競走又はA級の最上位(対象競走が牝馬限定競走の場合は牝馬準重賞競走、三歳競走の場合は三歳重賞競走、二歳競走の場合は二歳重賞競走)に編成する。
ただし、最終出走日から出走申込日までに90日を経過した馬は対象としない。
また、対象馬多数となるなどにより当該競走に編成できない馬については、次走以降に適用する。(要領6(7))
となっています。令和2年度の要領までは「過去の重賞競走や前走を参考」といったもう少し具体的な選考基準の表現があったのですが、「前走を参考」という点がやや硬直的な運用になっていた面もあったようで、令和3年度から表現が変わっています。ただ、表に出るのは選出が終わった後の当初編成後のものであり、一部他場で見られるような「希望した」といったような発表もないため、法則性があるのかはうかがい知れません。なお、ときおり回避があったのか当初発表の編成にいなかった馬が出馬表に出ていることもあります(地元重賞でも補欠制度があるようですが、交流競走以外補欠馬は発表されません)。
なお、編成要領6(7)の規定は2010(平成22)年度途中に原型が生まれた規定で、現在はダートグレード競走に出走する(成績は問わない)か、他場交流重賞で優勝した馬がそこから90日以内に高知で出走する場合、編成先が遠征した競走と同じ種類の最上位競走に指定されるようになっています。かつては高知での自己条件がC2やC3でも他場ダートグレードに選ばれるケースが比較的あり、その頃にはよく適用されていました。
選抜戦((A~C3級1組戦 特別競走))
高知けいばでは、一般格A~C3の1組は基本的に特別競走(重賞・準重賞含む)です。
編成替えが行われる年度最初の第1サイクルと秋(基本10月)の最初のサイクルは編成替え直後でシャッフルされていることから、各級の賞金順編成で組まれた1組(級混合が生じない限り各級賞金範囲最上位のグループ)による競走が組まれます。
それ以外のサイクルでは選抜馬による競走となります(ただし、編成の都合上選抜できるほど頭数がいない場合はそれ以外の時期でも賞金順の1組ができることがあります)。
なお、賞金順と選抜戦では選抜戦の方が若干賞金が高く設定されています。
かつて特別競走の選抜戦は、選抜基準がかなり具体的に編成要領に明示されていましたが、現在は編成要領6(6)(イ)で単に「競走成績を参考とし、選出する」とだけ規定されています。ただ、選ばない馬は下記の通り明示されています。
- 最終出走日から出走申込日までに90日を経過した馬
- 前走が下位級の馬(=昇級初戦馬)
- 前走が高知ではない転入馬(=高知に移籍してまず遠征した後に地元初戦を迎える馬)
要領6(6)(イ)によると、選考の際に参考とされるのは「前走」ですが、2021(令和3)年度より参考とされるのは「前走(高知の競走)」のみと改められました。ただし、引き続き前走が二走目戦の場合は前々走の一走目も参考対象となります。
この選抜戦の選考方法、基本的には前走の好成績馬が選抜されますが、かつては要領には書いていなかったものの「前走の選抜戦で入着していれば次走も選抜戦にとどめられる」という暗黙の傾向がよくささやかれていました。しかし、2021(令和3)年度からはそうではないケース(前走選抜入着でも次走が賞金順の組に下がっていたり、上位級混合競走の着外馬が選抜戦に入っていたり、一時は見られなかった記者選抜の勝ち馬が選抜戦に入っていたり)も見られます。上位着順馬重視という傾向は変わっていませんが、より勝ち馬やそれに近い馬を集めようとしている感はあります。
なお、前走が下位級の馬は選抜されませんが、「C3下」と「C3上」については違う級とはみなされておらず、「C3下」で勝った馬が「C3上」に上がって即選抜戦に選出されるケースは日常的に見られます(ただし、「C3-1選抜馬」の選抜対象自体はサイクル開始時点で「C3上」に在級する馬のみ)。このため、「C3-1選抜馬」は勝ち上がり馬が大勢いるケースもあり、全馬が前走1着というレースが見られることもあります。
ちなみに2010年11月末~2014年9月までは「特定クラスの競走は普通競走でも全組選抜戦」、2014年10月~2017年3月には「特定クラスの2組は普通競走だけど選抜戦」という編成が行われていました。全体の在籍頭数が少ない時代は賞金順編成では少頭数もあり力差がはっきりしすぎる傾向や、特別競走(1組)の選抜戦の選抜ルールが硬直的だったために、賞金順でない編成も用いられていましたが、現在は実施されていません。
※編成要領には3歳の特別競走の選抜戦も設定されていますが、確認した限り2014年9月6日(土)に「梼原町棚田米特別(3歳-1選抜馬)」が1度行われたきりです。
2歳特別競走
2歳戦の特別競走は新馬戦と、2020(令和2)年度からは9月末までの2歳戦が全て特別競走で行われています。
新馬戦は2015(平成27)年度から2018(平成30)年度まで全てフルゲート未満で編成されていましたので出走希望馬がそのまま編成されていました。2019年8月4日に新馬戦再開後初の1日2戦の新馬戦が組まれたことがありますが、この際は当初編成時は1戦だけだったのが追加編成で2戦になっており、この際は「当初編成馬(10頭)を誕生日の早い順に並べて半分に分割し早いグループを1組、遅いグループを2組」→「追加編成馬(4頭)を誕生日の早い順に並べて半分に分割し、早いグループを1組、遅いグループを2組」としたように見えました。一方、2020(令和2)年度は6月21日に実施された年度最初の新馬戦で当初から2戦編成されていましたが、こちらは生年月日の早い順に並べて半分に分けただけではないようだったため、確固たるルールは不明です。
新馬戦開始から9月末までの2歳戦特別競走は、まだ他場転入馬がそれほどいない時期に実施されることとなるため、特別競走で本賞金が高くなるだけでなく、高知デビュー馬に関しては特別競走で勝利した場合に「デビュー馬奨励賞」が支給されることになっているため、新馬入厩促進策の一環なのかもしれません。編成方法は後述の「普通競走(一走目)」と同じ、番組賞金順での編成です。
なお、2019(令和元)年度までは例年12月に組まれていました。こちらは上位馬の馬主に付加賞金が贈呈される「優良2歳馬促進対策事業対象競走」に指定された付加賞金付きの特別競走となっており、「金の鞍賞」と別の開催で行われる場合は、一般格に格付けされている2歳馬もこちらへの編成となり、2歳馬だけの番組賞金順で編成されていました。なお、2019年度は純粋な2歳格馬だけで行われています。
記者選抜戦
高知けいば名物の「一発逆転ファイナルレース」をはじめ、ときおり最終競走以外でも行われるのが「記者選抜戦」。サイクルごとに高知競馬新聞協会加盟(「中島競馬號」「福ちゃん」「競馬研究」の三紙)のトラックマンのうち2名が協議し、番組編成員との合議を経て、あらかじめ指定された級から選抜された馬による組(1つ~3つ)が編成されます。
この選抜基準については編成要領には規定されていませんが、「一発逆転ファイナルレース」についての取材記事や、「モーニング展望。」でトラックマンの方が語った内容によると
- 編成時点の近4走において勝利していない。
- 転入馬の場合は転入から3戦を終えるまでは選抜しない。
- 同一厩舎からの選抜は最大3頭、極力2頭まで。
- 近走の走破タイム(指数も考慮し)差がないこと。
- 補欠馬も選抜し、当初編成馬に回避があった場合は補欠を編入する。
という申し合わせがされているとのことで、実力差がはっきり見えないように馬を選んでいる感があります。組数はそのサイクルの級の一番下の組という扱い。級内で記者選抜が複数組編成された場合も一番下の組からとしており、近走成績の不振度に合わせて上の組にするか下の組にするか決められる傾向にあります(なお、勝ってないというだけなので、ずっと着外ばかりの馬が並んでいるというようなレースはめったになく、ポツポツと着を拾っている馬が大抵は混じっており、そういう馬が多ければ上の組になっている感があります)。
記者選抜は格付けが変動し、実力差が見極めにくい4月と10月の番組賞金再計算(編成替え)直後のサイクルでは実施されません。また、近年はありませんが、かつては番組編成の都合で実施されなかったケースが時々あり、その場合の最終競走は後述の普通競走(一走目)で組まれたレースが行われ、レース名も単に「ファイナルレース」となります。
選定馬戦
「全日本新人王争覇戦競走」、「ヤングジョッキーズシリーズ トライアルラウンド高知」「レディスジョッキーズシリーズ 高知ラウンド」「浦和・船橋・大井・川崎・高知ジョッキーズ競走」といった騎手交流戦で行われるのが「選定馬戦」で、特別競走として行われます。こちらはあらかじめ指定された級から出走馬を番組編成員が選定して組んだ競走で、選抜戦の一種といえます。具体的な選定対象馬は事前に発表される要領・細目で発表されます。
ただ、この選定馬戦は記者選抜、もしくはそれ以上というくらい、見た目からは力差がわかりにくいように馬が選定されている感があり、抽選で騎乗馬を選ぶ騎手交流戦でいわば「当たり」の馬がなるべく出ないようにされています。ただでさえ他場の騎手が多くいて展開が読みにくい騎手交流戦で、さらに馬も能力が平均化されているため、時に大きく荒れる事もあります。なお、組数についてはそのサイクルの他の同級のレースとの兼ね合いでつけ方はまちまちです。
普通競走(一走目)
特に選抜・選定されなかった出走希望馬はこのタイプのレースへの出走となり、ここでは機械的に編成されます。当初編成時点の級内の番組賞金上位から順番に選ばれ、各レースの頭数がおおむね均等となるよう組まれます。
なお、番組賞金が同額の馬が複数いる場合のルールが現在の編成要領には表記されていませんが、高知けいば公式サイトに残る最古の番組編成要領である2003(平成15)年度の編成要領に、賞金が同額の場合は「出走履歴の有無(有が上位)→生年月日(早いほうが上位)→馬名(五十音順の早いほうが上位)」という規定があり、現在の編成状況と照らし合わせると、確かに賞金が同額の場合は生年月日の早いほうが上位になっているため、実質的にこの規定が生きているものと思われます(番組賞金も生年月日も一緒というケースは最近では実例がありませんのでそこは確認できませんが…)。
また、かつては2歳格の頭数が少なく馬齢でのレースが組めない場合があり、その際は3歳格や古馬と混合で一般格のレースを組む場合がありましたが、その場合も年齢が低いからどうこうはなく、持っている番組賞金に合わせて古馬と同列に編成されていました。
こうして各馬に格付け内の順位を賞金順につけ、必要なレースの数を考慮したうえで、同一級のレースごとの出走頭数が概ね均等になるように各組の頭数を決め、上の組から番組賞金順の上位順位から順番に馬をはめこんでいき、レースが編成されています。
なお、単独の級だけでは余りや足らずが出て調整できない場合は、隣接級と組み合わせて頭数のバランスを取るために級混合戦(この場合は「AB混合」のように級を並べて組数は表示されない。賞金体系は上位級が採用される。賞金順で上位級の下位と下位級の上位を組み合わせる)も組まれます。なお、過去には編成後の回避で調整が付かなかったのか、2組混合戦(2014.4.5の1R「C3-7-8」)が組まれた珍しいケースもあります。
普通競走(二走目)
二走目は「その他の普通競走(一走目)」と同様の番組賞金順編成のみが行われます。なお、編成要領には規定されていませんが、二走目戦には一走目を走っていない馬は当然として、一走目が1着だった馬も出走できない運用となっています(これも平成15年度の編成要領には規定されているルールです)。
編成は出走申込馬を番組賞金順に並べ、上から各級イロハ…の順で組が作られるのは一走目と同じですが、この際、2・3歳格については古馬と混合されており、馬齢関係なしで賞金順に並べた形で上から順に出走馬が分けられ、ひっくるめて「C3級の二走目」として行われます(その結果たまたま3歳馬だけのレースになった場合だけ「3歳の二走目戦」とする模様)。
ただ、隣接した級の二走目が同日に行われる場合が多く(前半週なら「A級とB級」、後半週では「C1級とC2級とC3上」)、その場合は当初編成の組み方に固執せず、出走投票の結果に応じて組を再編成し、級混合戦になることも多くあります。なお、編成要領には特に記載はありませんが、ネット上の情報では在籍頭数の増加と賞金手当ての増加途上期にはものすごい数の登録頭数があったため、二走目を希望するもレースが足りず除外になった馬については次回以降の二走目時に出やすくなるような運用がされていたとのことです。
なお、後半週の二走目は、前半週の一走目の成績で賞金が加算された後の番組賞金で編成順位が決められていますが、この際、前半週の賞金で番組賞金が昇級のボーダーラインの金額を超えていても昇級は編成サイクルごとというルールがある為昇級はせず、一走目の時の級の二走目戦に編成されます。
(例:サイクル開始時はC2で、一走目に入着してC1格付けの番組賞金になった馬が二走目戦に出る場合、編成順位を決める番組賞金は加算後の額で編成されますが、格付け上はあくまでC2のままとなり、C1とC2の混合二走目戦ならC2の馬として斤量1キロ減となり、C1とC2の二走目戦が別々にある場合はC2の二走目戦へ編成されることとなります)。
C3級下の1600m戦
2023(令和5)年度より実施されているもので、C3級下格付け馬に対して1600m戦への出走希望馬を常時募り、その結果レース編成が可能となった場合にはその希望馬のみを編成した1600m戦が組まれています。その際希望馬だけで複数レースが組める場合は希望馬の番組賞金順で競走が分割されます。
なお、2018(平成30)年11月に「賞金諸手当支給要項」が改正された際、C3級1600m戦のみ賞金が増額されたことがあり、この時はC3級格付け馬を対象に1600m戦のみ出走希望をとってレースを編成、2018年12月30日に「C3-2希望馬」として施行されました。普段と違う距離で新味や妙味をという意図が考えられ、賞金の増も距離手当的な名目とあったと思われますが、そもそも希望が集まらないと組めないことからこの一度限りとなっており、また、2019(令和元)年度からは再びC3級の賞金が距離にかかわらず同額となり、3歳やC3下でもときおりマイルが組まれるようになったことで一旦条件戦の距離選択は消滅していました。
おわりに
高知けいばの場合は機械的に編成されている部分が大きいこと、編成要領で概略が示されていることからある程度レース編成の傾向、仕組みは外からでも掴みやすくなっており、だいたいこれで合ってるんではないかと思い、今回記事にしてみました。ただ、まだまだ謎な部分もありますし、魅力あるレース編成を行うために番組編成の方法も生き物のように変化していくと思われますので、もしそれに気づけば、おいおいまたこの記事を加筆していきたいと思います。