(2024年 馬場状態 11/17まで) [良]18 [稍重→良]1 [良→稍重]1 [良→稍重→重]1 [稍重]19 [稍重→重]1 [重]19 [不良→重]1 [重→不良]2 [不良]33

高知けいばの記者選抜&「一発逆転ファイナルレース」

(初回投稿)2018.6.10
(更新)全売得金に占める最終競走の売得金の比率、記者選抜の対象格ローテーション

『「高知けいば」といえば?』と聞くと、おそらく答えの一つとして返ってくるであろう「一発逆転ファイナルレース」。「荒れる」「予測不能」「超難解」と言われ、このレースの直前になると、ネット上で予想に苦しむ声や、半ば投げやりになりながらも「このレースだけはやる」と言った声まであるなど楽しみにしているファンが多く見られます。

ネット配信で地方競馬を楽しむ形が定着して以降、元々知る人ぞ知るカルト的な人気のあるレースではあったかと思いますが、一日の競馬全体の最後のレースとなる時間帯に組まれるという時間の利はあれ、噂が噂を呼んだのか、最近では重賞などのメイン競走よりもこのレースの売り上げの方が良い方がもはや当たり前といった状況になっており、競馬の常識を超える驚異的な状況で今やすっかり定着した感があります。(参考:2022(令和4)年度の高知けいばの全売得金に占める最終競走(「一発逆転」でない「ファイナルレース」も含む)の売得金は約32.9%)

既に10年を超える歴史を有し、地方競馬の名物レースと言っても決して大げさではなくなってきましたが、攻略法があれば私が知りたいくらいですのでそれは書くことはできません(知名度が上がったことによってプロアマ問わず様々な予想家の皆さんがデータを解析したりするなどして攻略法を提唱されているようですので検索してみてください)。当の選抜した専門紙トラックマンの方々も「自分で自分の首を絞めてる」というほどです。

ここでは当サイトらしく、このレースを含めた記者選抜戦について、成り立ちや仕組みについて例によってネット上に残る記録などを紐解きつつ記して見たいと思います。

記者選抜&「一発逆転ファイナルレース」とは?

高知けいばの「記者選抜戦」は、高知競馬予想専門紙各社で構成された「高知競馬新聞協会」(現在は「中島競馬號」「福ちゃん」「競馬研究」の3紙が加盟)の所属トラックマンから2名と組合編成担当者が協議し、最終的には番組編成責任者も加えた合議で決定される、指定された級に編成された馬の中から1~3レース分馬を選抜したレースです。そして、「一発逆転ファイナルレース」は最終競走に組まれた記者選抜戦に付けられたレース名となります。

稀に行われる最終競走以外に組まれる記者選抜は、通常編成の競走と見た目は変わらず(級・組表示の最後に「記者選抜」と付されるのみ)、広域場外発売対象競走になったり個人協賛競走がたまたま記者選抜戦になった場合はそちらのレース名が付きます。

この記者選抜戦にはテーマがあり、「近走において勝利から遠ざかっている馬を集め、不振からの『一発逆転』勝利を目指してもらう」ことにあります。地方競馬独自の制度である「選抜戦」は機械的な賞金順編成では実現できない成績優秀馬や上がり馬、距離のスペシャリスト的な馬を集め、実力伯仲の対戦を生むために設けられている編成方法ですが、高知けいばの現在の記者選抜戦は選ぶベクトルを逆転させながらも実力伯仲の対戦カードを作り出したものです。

選抜される条件の基本は「過去4走において勝利していない」こと(詳細後述)。こうすると、成績が芳しくない、もしくは似たような馬が集まることで、各馬の長所は強調できるのか、さりとて近走成績も参考にしようがない、近走のレースレベルを考慮しようとしても敗戦続きで参考にしていいのか…と主だった予想のキーがまるで使い物にならず、消去法を使うと全馬消えてしまう…ということも珍しくないため、結論としてどの馬にもチャンスがあるぞというレースが生まれることになるのでした。

そういう趣旨のレースであることから、各馬の陣営はこのレースなら勝てるチャンスがあると踏み、いつもは後方追走で終わってしまったり、先行はするけどすぐに下がってしまう馬でも、いつも以上に仕上げたり、一か八かの逃げ、あるいは脚を溜めて後ろから一気に差す競馬を狙ったり、あるいは成績上位の騎手への乗り替わりで変わり身を期待するなど、工夫をしてきます。また、騎手もこのレースならチャンスがあると、「モーニング展望」のインタビューで意気込むことが多く(「ファイナルなので頑張りたい」と言えばすべて丸く収まるのですw)、普段日の当たらない馬達を取り巻く人たちの目の色が変わるレースでもあります。

その意気込みがハマって、何十戦も低迷していた馬が見事な競馬を見せて人気薄から勝つこともあれば、逆に空回りが伝染して最後の直線で全馬の脚が止まるような展開になってとてつもない大波乱を巻き起こしてしまう恐ろしさも秘めているのが記者選抜、そしてそれを最終競走に持ってきたのが「一発逆転ファイナルレース」です。

「一発逆転ファイナルレース」は記者選抜ゆえの展開の読めなさ、どんぐりの背比べな実力差、鞍乗への微妙な期待と不安に加えて、その日の収支を確定させる最後の場という高揚感に「一発逆転ファイナルレース」というレース名が加わって独特のムードを形成しているように思われます。

 余談ですが、主催者的には『「一発逆転」は馬がするもの』であり、ファンが大荒れ馬券で馬券収支を「一発逆転」することを直接的に指しているのではないのだとか。つまり、馬券的には堅い決着でも勝ち馬は境遇を一発逆転させているので問題ないということでご納得のほどを。

なお、2014年6月7日以降、高知けいばの最終競走は三連単に限り払戻率が77%に引き上げられており(通常は72.5%)、最難関の三連単的中が達成されれば払戻金にさらにプレミアムが付くという特典も用意されています(「一発逆転」の付いていない「ファイナルレース」でも適用されます)。

最終競走の形式、記者選抜の選考方法 

現在の記者選抜の形式をまとめると次の通りです。

  • 最終競走が記者選抜戦の場合は、副題に「一発逆転」を付け、競走名を「ファイナルレース (級・組)記者選抜」とする。最終競走以外の記者選抜戦は級・組のあとに「記者選抜」を付す。
  • 「勝っていない馬を集めた」競走であるため、競走名に付される格付けの「組」については、その級の一番下の組に格付け。また、記者選抜が同一編成サイクルで同じ級に複数競走組まれている場合は、選抜したメンバーがより芳しくない方のレースを下の組に格付け。
  • 記者選抜を行う級はサイクル単位でのローテーションを組む。現在はC1級~C3級下、時期によっては3歳格を対象とし、対象の級には一定サイクルごとで組まれるようにする。(稀にこれ以外の級の馬でも組む場合がある)
  • 4月と10月に行われる編成替え直後は降級馬がいて実力差が見極めにくいため記者選抜を行わない。そのほか編成の都合で記者選抜が組めないときは最終競走のレース名を副題のない「ファイナルレース (級・組)」とし、通常の賞金順編成のレースを行う。

そして、具体的な馬の選び方については、以前「モーニング展望。」内で選抜の基準が明かされていたほか、競馬情報サイトのnetkeibaとグリーンチャンネル「アタック!地方競馬」で実際の選考過程の模様が取材されています。

  • 2019年2月20日放送「モーニング展望。」(当日担当:岩崎周吾トラックマン(福ちゃん))
    (→動画リンク
  • 2019.3.31付 netkeibaコラム「高知競馬のドル箱、ファイナルレースはこうして作られる!」(→こちら
  • 2021.6.19初回放送 グリーンチャンネル「アタック!地方競馬(第116回)」
    「ATTACK SPECIAL『潜入!高知競馬一発逆転ファイナルレース 記者選抜の舞台裏』」
選抜される前提条件
  • 編成時点の近4走において勝利していない馬を選抜する。
  • 同一厩舎の出走は最大3頭、極力2頭まで。
  • 転入馬は転入初戦から3戦は選抜しない。
  • 近走の走破タイム(指数も考慮し)差がないこと。

選考の事前準備として、当該サイクルにどの級の記者選抜が組まれるかはわかっているため、選抜担当記者の方は会議までに上記の基準をベースにして、まずは登録が見込まれ、記者選抜戦にも選べる候補馬をリストアップしているとのこと(目安になる1頭を決めてその馬を基準に能力が拮抗している馬を選ぶという手順も紹介されていました)。

そして会議の席上で番組編成委員から実際の当該サイクル登録馬を初めて渡され、その中から事前作成のリストをベースに協議をして決めていくようです。

その過程では、ピックアップした馬を改めて吟味し、走破タイムの出た条件や馬場状態、近走の走りぶりを思い返して引っ込めたり、加えたりするほか、あまり記者選抜に選ばれていない馬がいれば選ぶことで新味が出るかどうかを検討したり、メンバー全体を俯瞰して展開が容易に見えない組み合わせを目指したり、あるいは過去の実施済の記者選抜と似たようなメンバーになるのを避けたり、同一厩舎多頭出しになっていないかなども検討されています。

そして最終的に20~30分ほどかけて1レースずつ協議していき、決定した選抜馬(フルゲート分の編成馬+補欠3~4頭程度)が同席の番組編成委員に伝えられ、最終合議を経て決定されることとなります。

なお、1サイクルが2週で行われる際は、当初の編成で2週分がまとめて選抜されますが、極めてレアなケースとして、後半週の記者選抜戦に選抜された馬が前半週の二走目に出走して勝利した場合でも、既に編成を終えていることからメンバーの差し替えは行われず、「前走勝った馬が記者選抜にいる」というケースが理論上ありえ、過去には実例もあります(ただし、最近は前半週に二走目が組まれていないため、当面は起きないのではとも思われます)。

このように記者選抜戦はかなり入念な事前準備と吟味が加えられており、単純に着順が悪い馬を選んでいるといったものではありません。「勝っていない」=「1着以外」ゆえ、2着や3着が近走に入っている馬が入るケースもありますが、その2着3着がどんな2着3着だったのかを吟味しなければならないなど、この辺りは選抜記者と馬券購入者の勝負どころでもあります。

高知けいば「記者選抜戦」の歴史

高知けいばの公式サイトでにはあまり記者選抜戦に関するニュースリリースがなく、またスタート当時は筆者も当時は競馬を全く見ていない時代で資料も乏しいため、基本的にネット上に残る出馬表から類推して書いていることをお断りしておきます。

単なる「記者選抜」から「一発逆転」へ

「記者選抜戦」というのはボートレースではメジャーな存在だそうですが、地方競馬では一部場のグランプリレース的な重賞に記者選抜の出走枠を設けているほか、名古屋けいばが騎手交流戦の際に用いているとのことですが、他には聞いたことがありません。

高知けいばで「記者選抜戦」という表示がはじめて登場したのは2007年6月2日第6競走の「E2 記者選抜」(→NARの出馬表)。E級は現在のC3級に相当する当時の最下級ですが、組は上から2つ目の2組。同日の第9競走には「物部川特別 E記者選抜」という特別競走が組まれており、メンバーを見ると明らかに成績優秀馬が並ぶ1組戦でした(当時は選抜戦の場合組数は付けていなかった模様 →NARの出馬表)。
このように設定当初の記者選抜は通常イメージされる選抜戦と同じ成績上位馬による競走であり、いつもの番組編成員ではなく専門紙記者が行うことで違った視点で馬が選ばれるという新味が期待されたのかもしれません。当初の記者選抜戦は一部のクラスの上位1~2組を記者選抜で組むというものでした。

この時期から最終競走が記者選抜のこともあったのですが、特に「ファイナル~」というレース名もつかず、単に「記者選抜」とついているだけ。そもそも当時は高知けいばも当時は常識的な?番組編成をやっており、メインレースに近い組を最終競走に持ってきたらたまたまそれが記者選抜だったというのに過ぎず、級は別として下の組を最終に持ってくること自体当時はありませんでした。

2007年7月28日の第7競走ではじめて級の最下組を記者選抜した「B4 記者選抜」が組まれます(→NARの出馬表)。近5走で馬券圏内入りゼロの馬が集まる現在の記者選抜戦のような編成だったのですが、対戦表を見ると意外と勝負付けができているようなメンバーで、3着だけやや人気薄が来たという結果に終わっています。
その後夏ごろまでは下の組の記者選抜と上の組の記者選抜が混在する時期があり、同年秋の編成替え頃で一旦中断、再開後は上の組の記者選抜が徐々に減り、2008年に入ると記者選抜はほぼ特定級の下から1~3組として選抜する形に固定されますが、まだ下の組を最終に持ってくるという発想は当時はなかったようで、中盤あたりに組まれるのが一般的という形になっていました。

「夕焼けいば」が始まった2008年5月16日、はじめて下の組の記者選抜である「A3 記者選抜」が最終の第11競走に組まれます。こちらはこのサイクルのA級が3組しかなく、上位級なので従前の流れの編成ともいえるのですが、5月25日の開催では最終第11競走に「D7 記者選抜」を編成。この時のD級は7~9組が記者選抜。7組は決して下位低迷馬が揃っているわけではなかったのですが、この日はほかのレースがいずれも7~9頭立てなのに対してこのレースだけは11頭立て。格にこだわらず妙味のあるレースを最後に持ってくるという今につながるような編成の兆しだったのか、たまたまだったのかはわかりませんが、このレースはかつての道営クラシック二冠馬も14歳馬で8番人気だった森井美香騎手騎乗のシャーペンアイル号が勝利。3着にも9番人気馬が入り三連単75万馬券を叩き出す大波乱を巻き起こす結果になります(→NARの競走成績)。

このおよそ1か月後、金曜開催の「夕焼けいば」だった2008年6月20日の最終第11競走に「一発逆転ファイナルレース」のレース名が初めて登場。E級8組記者選抜で行われた第1戦は9番人気の3歳馬シンチャオ号が当時デビュー4年目の永森大智騎手の騎乗で勝利。1か月前に行われた最終競走の記者選抜ほどではないものの、ブービー人気から順に3頭での決着という期待通りの?大荒れスタートで三連単42万馬券の幕開けとなったのでした(→NARの競走成績)。

この日以降、一部の例外を除き最終競走は記者選抜の「一発逆転ファイナルレース」で固定されるようになります。なお、記者選抜自体は引続きクラス内で複数組組まれることも多く、最終競走でない記者選抜は引続きただの記者選抜としてほかのレースで組まれています。

ちなみにこの「一発逆転ファイナルレース」というタイトル、誰が考え出したんでしょう…?高知けいばの売上が大きく反転したことでメディアに取り上げられることも増えており、記者選抜戦自体は主催者側の提案に関係者の協力が得られて始まったということは伝わっているのですが、ネーミングの経緯については伝わってくることはありません。当時の高知けいばの公式サイトのアーカイブ等を見ても「一発逆転ファイナルレース」開始についてのリリースはありません(初期から「一発逆転」の存在をメディアでアピールしていたのは井上オークスさんであろうと思いますが、オークスさんもスタートから半年以上たってから妙味の高さを馬券で参加する形で取り上げてるのでその辺の流れについての言及はなく)。

のちにこの開催日の中継映像を馬友さんから頂いたのですが、その時の「モーニング展望。」もレース前の橋口アナウンサーのコメントもそういう名前が付いたとサラっと触れた程度で終わっており、レース結果以外は実に静かなスタートでした。考えた方もここまでのヒット作になるとは当時想像できたんでしょうか。

表記揺れ、問答無用、最終じゃない?…形が固まるまで

スタートから数年の間はときおり例外も生み出していました。

記者選抜じゃないのに「一発逆転」

出馬表上は「一発逆転」が副題のため、NAR以外のネット上の馬柱では「記者選抜」の文字の有無で「一発逆転」かどうかを判断することになりますが、2008年10月19日の最終競走には「ファイナルレース B4」が組まれていました。記者選抜ではないのでいわゆるただの「ファイナルレース」…と思いきや、NARの出馬表(→こちら)を見るとなぜか「一発逆転」の文字。

この時は全体的に出走頭数が少なく、少頭数に分割してレース数を確保しており、おそらくこの時の順番だったB級では記者選抜ができなかったと思われます。6月の「一発逆転」スタート以降、この開催がはじめて記者選抜でない最終が行われた日なので(2010年までは4・10月の編成替え直後の開催でも、降級馬がいようと記者選抜は組んでいた)、この時は流れで一発逆転を付けてたものと思われますが、さすがにそれは誇大だとなったのかこの1回限りでした。ちなみに、レースは1番人気だけ飛んでました…。

なお、その後しばらくは通常編成の最終競走の場合、「ファイナルレース」も付けない形で行われており、通常編成の最終競走に単に「ファイナルレース」と名づけるようになったのは2010年10月10日の開催が初でした(2009年1月11、12日にも「記者選抜」のない「一発逆転ファイナルレース」があるものの、出馬表をみるとこれは選抜してるような気がする・・・)。

ファイナルじゃない「一発逆転」

2008年11月14日の開催。この日は10R制で行われていたのですが、9Rに組まれていたのが「一発逆転レース C5記者選抜」(→NARの出馬表)というレース。
「ファイナル」が消えてちょっと間が抜けたようなレース名になってしまってますが、この日の最終は「ひまわりフェスタ特別 D選抜馬」というD級1組戦が入っており、順番が逆の番組編成。最終競走じゃないのでもちろんファイナルは名乗れないですが…スタートから4か月ほどで早くも「一発逆転」がブランド化して外せなかったんでしょうか。これもこの1回限り。ちなみに「一発逆転レース」は三単6万馬券の波乱決着だったのに対し、最終に入ったD選抜戦は三単12.8倍という堅い決着でした。

レース名が「一発逆転ファイナルレース」

厳密なレース名は「ファイナルレース」で、記者選抜の時に副題に「一発逆転」と付けるのが本来なのですが、2009年5月9日(→NARの出馬表)、翌5月10日(→NARの出馬表)にはレース名を「一発逆転ファイナルレース」として、副題に「記者選抜」を回したというケースがありました。「一発逆転ファイナルレース E6記者選抜」と全部レース名とするのは長すぎるということもあるんでしょうか。ただこうすると「記者選抜」が消えてしまう媒体も多く、この2日だけでした。

頭数が少なすぎて…

2009年8月23日の開催。既に「夜さ恋ナイター」ははじまっていたものの、この日は昼間開催。ただ、真夏もあってかどのレースも頭数が8頭以下という厳しい開催。そして、記者選抜は最終に組まれたもののレース名は「B5 記者選抜」だけ。記者選抜なのになぜ…かというと(→NARの出馬表)、この日のレース最小の5頭立て。上位級記者選抜はA・B混合で行われることがある時期でしたが、5頭立てでは(建前上はその趣旨ではないとはいえ)馬券的に一発逆転できないということか、レース名の付与が見送られていました。ちなみに見立てどおり三連単は7.1倍でした。

なお、2011年11月19日の開催でも記者選抜が6頭立てになった時があったものの、その時は記者選抜を最終には持ってこず、頭数の多いC1ロ(10頭立て)をただの「ファイナルレース」として施行しています(→NAR その日のレース一覧)。

一方、2014年3月9日には5頭立てでも「一発逆転ファイナルレース A-4記者選抜」が行われた例も(→NARの出馬表)。ただ、この日は8レースしか組めず頭数も一番多くて9頭というきつい時ということもあってそのままやってしまったんでしょう。結果は三連単13.1倍。ただ、それでも上から三単では5番目という払戻額。こんな時代もあったんだと今では懐かしく思えてしまいます。

もう一回やったらどうなるか…

2010年6月19日、20日の「一発逆転ファイナルレース」はちょっとした実験のような記者選抜が行われました。6月19日は「C2二記者選抜」(→NARの出馬表)、6月20日は「C3ロ記者選抜」(→NARの出馬表)、つまり二走目戦メンバーを記者選抜するというもの。しかも、この2戦の前走はいずれも記者選抜戦というメンバー。「記者選抜の連闘」というか敗者復活戦みたいなレースが行われたのでした。

記者選抜は「もう一度同じメンバーでやっても着順が同じとは思えない」と言われることもありますが、この時は一走目でそれぞれ2組組まれた記者選抜からの連闘組を改めて1つの二走目記者選抜へ選抜したというもの。ただ、結果的には2鞍とも概ね一走目の上位馬がそのまま上位に来る結果に終わっており、思ったほど面白くなかったという感じだったのか今のところこの1回限りです。

級混合の記者選抜

一時は二走目戦でしか見られなかった級混合戦も、近年は一走目でもよく見られるようになってきました。しかし、記者選抜は選ぶ級が決まっているため、本来級混合というのはないはず。しかし、2008年11月8日のA級2組・B級4組混合(→NARの出馬表)を皮切りに、同年はもう1レース、2009年には全部で6レース、そして2010年5月10日のAB混合(→NARの出馬表 この時は現在のA~C3級制になっていたので、級混合一走目は組数が付かない)まで級混合で記者選抜の「一発逆転ファイナルレース」が行われたこともありました。過去8レース中7レースがAB混合、1レースがBC混合(2009年10月17日のB級5組・C級4組混合 →NARの出馬表)と上級絡みばかりということからも、記者選抜を組む順番の級単体では出走頭数の関係で編成が難しく、級混合にせざるをえなかったということかと思われます。

東日本大震災直後の最終競走

未曾有の被害をもたらした2011年3月11日の東日本大震災。遠く離れた高知けいばではあったものの3月14日に控えていた「第13回黒船賞(JpnIII)」の開催は中止。3月19日から開催は再開されたものの3月中の開催は電力事情を鑑みて1時間終了時間を前倒しした「夕焼けいば」に変更されるなど大きな影響がありました。

その状況において、「一発逆転ファイナルレース」というのも…というのがあったのか、4月の編成替え直後を除き記者選抜戦は通常通り行われたものの、レース名は「東日本被災地復興支援 がんばれ東日本特別 C1-5記者選抜」(2011.3.19 →NARの出馬表)を皮切りにしばらく復興支援の名前が続くこととなります。4月最初の開催で1週だけ副題に「ファイナルレース」と付けたものの、翌週からはまたなくなり、震災から2か月たった2011年5月13日、ようやく「一発逆転ファイナルレース」のレース名付与が再開されています。

何が起こるかわからない昨今ですが、このレース名が付けられる雰囲気じゃない、というようなことがまた起きないことを祈るばかりです。

3歳馬の記者選抜

厳しい経営状況にあった頃の高知けいばは若馬が少なく2・3歳戦がすぐ組めないという時期も長くあったのですが、2014年は古馬編入直前の時期には3歳馬だけでフルゲート近くでも5組組めるという状況になり、9月6日には史上初の3歳戦の記者選抜「一発逆転ファイナルレース 3歳-5記者選抜」(→NARの出馬表)が組まれています。まだ若い3歳馬にいきなり「一発逆転」というのもと思わなくもないですが、…まあなかなかのメンバーが揃っていました。

その後はしばらく3歳の記者選抜はなかったのですが、2020年には早くから3歳格付の馬の転入が相次ぎ、6月の終わりには早々と3歳戦だけで6組組める状況になったため、2020年7月4日に約6年ぶりとなる「一発逆転ファイナルレース 3歳-5記者選抜」(→NARの出馬表)が組まれました。この頃は、サイクルの後半週にC3級下から2組の記者選抜を組むのが慣例となっていましたが、3歳馬が多い状況は変わらなかったため、8月、9月(3歳格付けの終了時期)はサイクル後半週の記者選抜を3歳格とC3級下から1組ずつ組む形に変えて3歳の記者選抜が定期化されていました。

3歳格記者選抜は2021年度に入ると上半期途中から、2022年度は記者選抜の開始と同時に定期設定されたことから、3歳馬の入厩傾向が変わらなければ今後も同様の状況になるものと思われます。

大晦日といえば…

(YouTube配信アーカイブより)

1988年から途切れず続く高知けいばの大晦日開催。「夜さ恋ナイター」ではなく「夕焼けいば」として開催されている大晦日の開催ですが、それでも最終競走の例年発走時間は20時前であり、一年の日本競馬の最終競走となっているため、レース名の頭に西暦を付け、1年の締めくくりの意味もこめてか「一発逆転(西暦)ファイナルレース」となる形が定着しています。

ずっとこうなのかなと調べてみると、この形になったのは2010年の開催からで、ナイター設備設置初年の2009年は「'09一発逆転ファイナルレース」(→NARの出馬表)と少し表記が違っていました。では一発逆転初年の2008年はというと「大晦日一発逆転ファイナルレース」(→NARの出馬表)というレース名。個人的には大晦日よりも西暦の方が終わりという感じがしていいかなと。ただ、明けた2009年は1月1日から3日まで行われ、実に4日間連続開催になっていたのですが、この年明け3日間の最終競走は「新年一発逆転ファイナルレース」というレース名で行われていました。これはこの年だけ。

余談ですが、一発逆転ファイナルレースが始まる前の2005~2007年の大晦日最終競走は個人協賛の「年末年始は馬次第特別」が入っていました。年の最終競走が個人協賛というのもなかなか高知けいばらしい…。

記者選抜が編成される「級」のローテーション

記者選抜戦といえばとかく低いクラスの馬の低迷馬が集まるというイメージが先行しがち。以前は全クラスで記者選抜が組まれていたのですが、頭数の関係からか次第にA級やB級ではめったに組まれなくなり、現在は主に一般格のC1級からC3級下と場合によっては3歳格で組まれます。

なお、なかなか入着できずにC3下でくすぶる馬達だけでなく、昇級で頭打ちになったり、編入級の籍が高くて上位に絡めず止まってしまった馬にも一発逆転のチャンスが等しく与えられるよう、記者選抜が編成される級はローテーションされており、現在は基本的に概ね1~2編成サイクルごとに回ってきます。

頭数が少ない頃は上半期と下半期でローテーションのパターンが変わっており、また、2016年に賞金が上がって級ごとの在籍頭数に偏在が生じたり、頭数が増えてきた関係か2016年度下半期あたりはローテーションが流動的になった時期もあったほか、2017年度下半期以降はほとんどのサイクルで常にC3級上下とも記者選抜が組まれ続けた末、2018年度以降はほぼC級のみでの実施となりました。また3歳格馬の増加によって、2020年度からは上半期に3歳格だけで組む記者選抜がレギュラー化、2022年度には下半期の明け3歳でも記者選抜するといった変化が生じています。

おわりに

他地区やJRAのファンからも「うちでもできないのか?」と言ったネット上の書き込みや、存廃問題が巻き上がっていた頃の各地の振興策の会議の意見の中にまで魅力ある番組作りの一環の例として「一発逆転ファイナルレース」を取り上げていたのを見た覚えがあるなど、売上的な魅力が先行しがちな「一発逆転ファイナルレース」。

ただ、出走馬選定はその馬の成績、今後にも直結する非常にセンシティブな案件であり、単に主観的に「選ぶ」「選ばない」をされてはたまらないと、陣営サイドの理解が得られなければ実現しなかったと思われます(ゆえに競馬は陣営が出走レースを投票したり、賞金順で機械的に決めたり、抽選したり、第三者であるファン投票で主観的要素を極力避けるのでは)。

高知けいばは元々主催者がレース編成の主導権をある程度持っていたこともあって、前述の明確な選抜の前提を作ったうえで、現場サイドと距離が近い専門紙記者が介在する形を取り、こういったレースが実現できたといえ(下記参考記事によると最初はやはり「選ぶ」「選ばない」で記者の方にはクレームもあったようですが)、単に高知けいばが放つ独創的な企画がヒットした、だけではなく導入当時の切迫感の共有と、規模が小さく関係者間の合意形成がやり易く理解が得られたという高知けいばの置かれていた状況が合わさって一発逆転ホームランのヒット作に繋がったのかもしれません。

近年は佐賀競馬の「ウーマんチャンス」、笠松競馬の「○級サバイバル」「〇級セレクション」、川崎競馬の「ファイナルアンサー賞」、名古屋競馬の「はい上がれ!しゃちほこ賞」といった勝ちが遠い馬を選抜で揃え、勝利を目指す競走が他場でも行われるなど、新しい流れが広がりあります。そのパイオニアは間違いなく高知けいばの「一発逆転ファイナルレース」であることは、ファンも誇りにしていいのかもしれません。

参考
  • netkeibaコラム「地獄から天国へ。名門紙TMが高知競馬の四半世紀を語る」
    風間恒一(中島競馬號)(→こちら
  • 「モーニング展望。」(2019年2月20日放送分)
    (高知けいば公式サイト「モー展。通信」→こちら
  • netkeibaコラム「高知競馬のドル箱、ファイナルレースはこうして作られる!」
    風間恒一、山﨑伸浩(福ちゃん)(→こちら
  • グリーンチャンネル「アタック!地方競馬」
    (2021年6月19日初回放送・第116回)
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